椎間板による腰痛(椎間板性腰痛)について

椎間板による腰痛(椎間板性腰痛)とは

椎間板性腰痛(ついかんばんせいようつう)とは、背骨と背骨の間にあるクッションの役割をする椎間板(ついかんばん)そのものに、小さな傷や炎症(えんしょう・赤くはれて熱をもつこと)が起こり、腰に痛みが出る状態をいいます。

椎間板は、中央にあるゼリーのような部分の髄核(ずいかく)と、それを外側から包む線維輪(せんいりん)という丈夫な膜でできています。

この椎間板は、年齢とともに少しずつ水分が減り、弾力が落ちていきます。これは変性(へんせい・性質が変わること)と呼ばれ、20代で約3割、70代では9割ほどの人に見られるとされ、特別な病気ではなく誰にでも起こる自然な変化です。

もともと椎間板の中には、痛みを感じる神経や血管はほとんどありません。そのため、多少すり減っていても痛みを感じないことも多くあります。

しかし、長時間座り続ける生活、前かがみの作業、重い物を何度も持つ動き、スポーツでの強い衝撃、車に長く乗ることによる振動などが重なると、外側の線維輪に細かい傷が入りやすくなります。

その結果、炎症が起こり、本来はないはずの神経が椎間板の中に入り込み、腰の痛みを強く感じるようになります。

さらに、体重の増加、喫煙(きつえん)、糖尿病(とうにょうびょう・血糖が高くなる病気)などで血の巡りや体の回復力が落ちると、傷が治りにくくなります。

ここでよく混同されるのが、椎間板ヘルニア(ついかんばんへるにあ)との違いです。椎間板性腰痛は、椎間板の中にできた傷や炎症が原因で、腰の真ん中あたりに重だるい痛みが出やすいのが特徴です。

一方、椎間板ヘルニアは、ゼリー状の髄核が外に飛び出し、近くを通る神経を直接刺激することで、腰だけでなくお尻や脚にしびれや痛みが広がりやすくなります。

つまり、ヘルニアは飛び出しが問題になり、椎間板性腰痛は飛び出さなくても痛みが出る点が大きな違いです。

椎間板ヘルニアは検査の画像で分かることがありますが、椎間板性腰痛は小さな傷が原因のため、画像に写らないことも少なくありません。

そのため、前かがみの動きや、長く座ったあとに立ち上がる時に痛みが強くなるかどうかなど、体の動き方が判断の手がかりになります。

どちらの場合も大切なのは、腰だけを守ろうとするのではなく、体全体で負担を分け合える状態に戻すことです。

姿勢や体の使い方を整え、筋肉や関節がきちんと動くようになることで、椎間板にかかる負担は自然と減り、痛みが落ち着いていくケースは多くあります。

【出典】Nerve ingrowth into diseased intervertebral disc in chronic back pain

こんな悩みはありませんか?

車の運転で道路の段差などの振動で腰の奥に響くような感覚がある。

朝よりも夕方になるほど腰がつらく、長い時間座っていると痛みが増す。

座っている姿勢が続くと腰が重く、立ち上がるときに“鈍い痛み”が走る。

マッサージや湿布では良くならず、いつも重だるい。

掃除や台所など中腰や前かがみ姿勢を続けると、腰の奥が張って伸ばばすのがつらい。

病院のMRIやレントゲンで「椎間板がすり減っている」と言われた。

椎間板性腰痛は、神経が強く押される椎間板ヘルニア(ついかんばんへるにあ)と違い、しびれよりも、座る・前かがみなどで椎間板に圧がかかる場面で痛みが出やすいタイプです。

原因

椎間板性腰痛の原因は、色んな要因がかさなることによって引き起こされることが多く、以下のようなものが挙げられます。

  • 椎間板(ついかんばん)は、体重や重力の圧を受け止めるクッションの役割をしていますが、長時間座る姿勢や前かがみ姿勢では、この圧が一点に集中しやすくなります。
  • 年齢とともに椎間板の中の水分量が減り、弾力が落ちていきます。これは変性(へんせい=性質が変わること)と呼ばれる自然な変化です。
  • 骨盤が後ろに傾いたような座る姿勢(背もたれにもたれる座り方)では、椎間板後方に圧力が集中します。左右どちらかに偏った立ち姿勢や脚の長さの左右差も、腰の片側だけに負担を生みます。
  • 腰を支える体幹筋(多裂筋・腹横筋など)が十分に働かないと、椎間板が直接荷重を受けます。また、神経から筋への反応が鈍ることで動作のバランスが崩れ、負荷が偏ります。
  • 弾力が落ちた椎間板に同じ方向の負荷が繰り返しかかると、外側を包む線維輪(せんいりん=椎間板を包む丈夫な膜)に小さな傷が入りやすくなり、もともと椎間板の中には痛みを感じる神経はほとんどありませんが、炎症が続くことで神経が入り込みやすくなり、痛みが長引くことがあります。
  • 喫煙や糖尿病、高脂血症などにより椎間板への栄養供給が悪化し、修復力が低下します。

これらの要因が重なると、椎間板は「すり減る」というよりも「弱った組織が炎症を起こす」  状態になります。

【出典】Biomechanical Effects of Different Sitting Postures and Physiologic Movements on the Lumbar Spine: A Finite Element Study

特徴

  • 痛みの位置を指で示すと、広い範囲ではなく一点または狭い範囲を指すことが多い。
  • 前にかがむ姿勢や、背中を丸めた状態が続くと症状が強くなりやすい。
  • 痛みの強さが日によって変わりやすく、無理をした覚えがなくても悪い日と楽な日がはっきり分かれる。
  • 車の運転やデスクワークなど長時間の座り姿勢で悪化し、立ったり、歩いたりすると少し楽になる。
  • 強いしびれや麻痺(まひ・力が入りにくくなること)が主な症状になることは少ない。
  • その場で揉んだり温めても一時的には楽になるが、姿勢や動作が変わらないとすぐ戻る。

また、病院などのレントゲンでは異常がないのに痛みがあるという、「いわゆる腰痛」といわれる特徴があります。

これは、椎間板内部の細かい損傷や炎症が画像上で見えづらいためで、実際には線維輪(中心部にあるゼリー状の髄核を取り囲む繊維の層)に神経や血管が入り込んで痛みを感じているケースが多いことが報告されています。

【出典】Nerve ingrowth into diseased intervertebral disc in chronic back pain

一般的な改善策

  • 明らかな異常が見つからない場合、消炎鎮痛薬(しょうえんちんつうやく=炎症や痛みを抑える薬)や湿布などで、痛みを落ち着かせる対応が取られることが多い。
  • コルセットや腰部ベルトを一時的に使用し、腰を丸める動作を減らして痛みを和らげる方法が取られる場合もある。
  • 症状が続く場合は、理学療法(りがくりょうほう・体を動かして回復を促すリハビリ)として、軽い体操や姿勢指導が行われることがあります。
  • 痛みが強い時期には、無理な前かがみ動作や長時間の座位を避け、椎間板への圧を減らす生活指導が行われます。
  • 家庭では、座り姿勢を見直し、椅子の高さや背もたれを調整して腰が丸まりにくい環境を整える工夫が勧められます。
  • 痛みが軽くなったあとも、急に元の生活に戻さず、腰に圧が集中しにくい体の使い方を意識しながら徐々に活動量を増やしていくことが大切とされる。

これらは痛みの軽減に有効な場合がありますが、再発防止や構造的改善までを視野に入れると、椎間板周囲の関節・筋膜・神経の連携を同時に整えるアプローチが必要となります。

さとう流施術所の、なぜこのようなアプローチが効くのか

椎間板性腰痛は、単に「椎間板が傷んでいる」だけでなく、その周囲の関節・筋膜・神経の動きや支えのバランスが崩れていることが大きな原因です。そのため当院では、痛みの根本を整えるために、以下の理論に基づいたアプローチを行います。

人の体は、筋肉だけでは動けません。脳や脊髄からの「動け」という信号(=神経刺激)を受け取って初めて、筋肉が収縮します。

ところが、痛み・炎症・長時間の不良姿勢・運動不足などが続くと、脳と筋肉の間の伝達が鈍くなり、うまく“使えない筋肉”が出てきます。腰痛では特に、腹横筋・多裂筋・骨盤底筋などの深部筋がその代表です。

椎間板にストレスがかかっている場合、背骨の可動性を取り戻すことと、腰を支える神経‐筋の連携を再教育することが大切です。神経‐筋の連携を再教育するとは、「本来働くべき筋肉が、正しいタイミングと力加減で動けるように再び学習させる」ことです。

たとえば腰痛の人は、動くときに深部筋が遅れて働き、表面の筋肉(腰方形筋や脊柱起立筋など)ばかりが頑張ってしまいます。その結果、動作のバランスが崩れ、椎間板や関節に負担が集中するのです。

PNFのようなアプローチでは、軽い抵抗や方向性を与えながら、「この動きのときにこの筋肉をこう使う」という神経パターンを再び活性化させます。

さらに、PNF(神経‐筋促通テクニック)を用いて、腹横筋多裂筋などの深部筋を正しく働かせることで、腰を支える力を再構築します。神経と筋肉の協調性を取り戻すことで、無意識でも姿勢が安定し、再発しにくい体を作ります。

また、このような症状では、ジョイントディスファンクション・テクニックも効果的です。関節の微細な動きを整えることで、背骨の滑らかさを回復させ、関節包や靭帯へのストレスを減らします。結果として、椎間板への圧が均等になり、炎症の再燃を防ぎます。

そして痛みが長引いている方ほど、立つ・座る・歩くという普段の動作の中に、わずかな偏りが残っています。ここを本人の努力だけで変えるのは難しく、気をつけても戻ってしまうことがよくあります。

そこで補助として使うのがスパイラルテーピングです。スパイラルテーピングは、腰を強く固定したり姿勢を矯正するためのものではありません。

皮膚にやさしく貼ることで、皮膚の感覚を通して体のバランス調整に関わる働きを助け、動作中に出てしまう偏りを減らすことを狙います。

皮膚から入る感覚が変わるだけでも、力の入り方や動き方が変化することがあるため、施術で整えた動きが生活の中で崩れにくくなる助けになります。

もちろんテーピングだけで腰痛が治るわけではありませんが、椎間板に同じ圧がかかり続ける流れを止める補助として、必要な方にだけ組み合わせます。

椎間板性腰痛は、痛みの出方に座る負担や前かがみの負担が深く関わるぶん、原因が椎間板だけに見えても、実際には 背骨の連動と動作の偏り がセットで残っていることが多い腰痛です。

さとう流施術所では、椎間板を無理に押したり伸ばしたりするのではなく、椎間板が働きすぎる流れそのものを変え、回復の邪魔をしていた動作パターンを減らしていきます。

                                  ※効果には個人差があります。

セルフケア・再発予防

  • 同じ姿勢や動作をやめる―仕事や運転で長時間同じ姿勢が続く場合、30~60分に一回は立ったり、腰・背中・脚を軽く動かしてください。特に車社会・通勤片道30分以上・立ち仕事の多い宇都宮市では、振動や同じ姿勢が椎間板に負担となるため、「動きの区切り」をできるだけ自分で設けることが大切です。
  • 体幹を支える筋肉のエクササイズ―仰向けでお腹をへこませる呼吸をくり返すことで腹横筋・四つん這いで背骨をゆっくり丸めて戻す動きをくり返すことで多裂筋・仰向けでお尻を上げることをくり返すことで殿筋といった腰を支える機能が養われます。
  • 重い荷物を持つときや中腰姿勢時の工夫―荷物などを持つときは背中を丸めず、体に荷物をなるべく近づけた位置で膝を曲げて脚や殿筋を使って持ち上げる。前かがみの作業時は腰ではなく股関節・膝・骨盤の動きを使う。長時間の台所仕事など足元に台を置いて片足を置き、なるべく中腰姿勢にならない工夫をする。
  • 自宅でできるストレッチ・筋膜リリース―腰・おしり・太もも後面・ふくらはぎの下にゴムボールや筒状のものを置きコロコロころがすことで、おしりや太ももの後ろの筋膜をほぐすことができ、椎間板にかかる引っ張り・滑りといった負荷を軽減できます。
  • 生活習慣の見直し―体重のコントロール、喫煙を控える、睡眠の量や質を確保する、食べ物や運動も最初は無理をせずに行い、血糖値・血圧・コレステロールを整えていくなど椎間板の修復力を支える体内環境を整えておきましょう。
  • いつもと違う感覚・早期対応―腰が「抜ける」「重だるい」「伸びづらい」など、いちもとちがう症状が続く場合は、「まだ我慢できるから」と放置せず、早めに改善策を講じることで慢性化・急性増悪のリスクを減らせます。

これらを日ごろから意識することで、椎間板への負荷をなるべく減らし、「痛みが出にくい・戻りにくい」身体をつくることが可能です。

Q&A

椎間板性腰痛と診断されましたが、手術が必要ですか?

椎間板性腰痛=即手術というわけではありません。多くの場合、まずは保存療法といって手術以外の治療法・生活習慣改善・体幹支持筋強化・姿勢改善で改善可能です。実際、神経根(脊髄(せきずい)から枝分かれして体の各部へ伸びている神経の根元のこと)が強い圧迫を受けて麻痺や筋力低下などが進行している・保存療法で改善しない・日常生活に支障が出ているといった特定のケースでは手術が必要となる場合もあります。

MRIで「椎間板変性があります」と言われました。痛みがなくても注意が必要ですか?

はい。椎間板変性は加齢の一部であり、必ずしも痛みが出るわけではなく、無症状の方にも椎間板変性が多く見られます。しかし、長時間負荷がかかる姿勢や体への振動・体幹支持筋の低下・脚長差の違い・動きのクセなどが重なってくると、痛みが出てくるリスクが高まるため、「早めに対策をする」ことでリスクを下げていくのが重要です。

「椎間板が滑っている」、「椎間板ヘルニアがあります」と言われています。椎間板性腰痛とどう違いますか?

「椎間板性腰痛」は主に椎間板そのもので線維輪(せんいりん)―中心部にあるゼリー状の髄核を取り囲む繊維の層・髄核(ずいかく)―中心部にあるゼリー状のもの・軟骨終板(なんこつしゅうばん)―椎間板と背骨をつなぐものなどに問題があり、痛みを感じている状態をいいます。一方で「椎間板ヘルニア」は椎間板の中の髄核などの内容物が繊維輪を破り外に突出して神経を圧迫したり、椎間板が外に押されることで椎間関節・骨・靭帯・硬膜(神経を包む膜)などが影響を受けて痛みを出しているケースです。症状・治療法・経過が異なるため、まずは専門医・施術者による評価を受けることが大切です。

仕事が製造業で立ちっぱなしです。悪化させない方法は?

同じ姿勢をなるべく続けないことです。作業の合間に膝を軽く曲げて腰を伸ばすたり腰を回したりする動作、休憩中にお尻のストレッチを行うだけでも負担を軽減できます。

【出典】Discogenic Back Pain: Update on Treatment

痛みの根本を理解し、正しく整えることが改善への第一歩です

椎間板性腰痛は、腰を動かしたから悪くなる腰痛ではありません。毎日の生活の中で、同じ姿勢や同じ動きが続き、同じ椎間板に負担が集まり続けることで起こりやすい腰痛です。

さとう流施術所では、腰のどこが痛いかよりも、どんな生活の場面で腰に負担が集まっているかを重視しています。仕事、家事、移動、休み方。その人の生活を聞きながら、腰が使われ過ぎている場面を一緒に整理します。

施術では、椎間板そのものをどうにかしようとはしません。背骨全体や体の動きを整え、腰だけに負担が集まらない状態をつくることを目的にしています。

家でのセルフケアも、全員に同じことは勧めません。運動・姿勢・体の使い方は、その人の生活に合うものだけを選び、やらなければいけないことを増やさない形でお伝えしています。

また、生活が忙しすぎて体が休めていない場合は、施術や動きの調整が定着しにくいことがあります。そのため、食事や休み方についても、無理のない範囲で見直せる点があれば一緒に確認します。

椎間板性腰痛は、特別なことを頑張る腰痛ではありません。腰に負担が集まり続けている生活を見直すことで、日常の重さや違和感が変わっていく腰痛です。

原因が分からないまま腰の不安が続いているなら、一度ご相談ください。あなたの生活に合った形で、腰と向き合っていきます。