筋肉や筋膜による腰痛(筋・筋膜性腰痛)とは
筋肉や、そのまわりを包んでいる筋膜(きんまく)に小さな傷や炎症(えんしょう・赤くなったり腫れたりすること)が起こると、筋肉どうしの動きが悪くなります。
すると、体を動かしたときに、張った感じや痛みが出やすくなります。筋膜は、筋肉を一つ一つ包みながら、となり合う筋肉が引っかからずに動けるよう手助けをする、とても大切な組織です。
ところが、疲れがたまった状態や、姿勢の崩れ、気づかないうちの力み、長い時間同じ姿勢で過ごす生活が続くと、筋膜が硬くなったり、くっついてしまうことがあります。
こうなると、筋肉が思うように伸びたり縮んだりできなくなります。その状態が続くと、押すとズーンと響くような硬い部分ができることがあります。
これは筋硬結(きんこうけつ・筋肉の中にできる硬いしこり)や、トリガーポイント(痛みの引き金になる場所)と呼ばれ、腰を押しているのに、お尻や太ももなど別の場所が痛む関連痛(かんれんつう)が出ることもあります。
腰痛というと、神経が押されているせいだと思われがちですが、実際には多くの腰痛が、このような筋肉や筋膜の動きの悪さから起こっていることが分かっています。
特に腰のまわりでは、体を支える脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん・背骨を立てて姿勢を保つ筋肉)に負担が集中しやすくなります。
硬さが積み重なると、筋膜がくっつくだけでなく、筋肉が骨に付く部分に炎症が起きたり、引っぱられる力が強くかかって小さな傷ができることもあります。

急な動き、体をひねる動作が多い運動、長時間の前かがみ姿勢、年齢とともに背骨が変形することも、こうした筋膜のトラブルを起こしやすくします。
また、お腹の奥にある腹横筋(ふくおうきん・お腹の深いところで体を支える筋肉)が弱くなると、腰を守る力が下がります。
その代わりに、腰の筋肉ばかりががんばりすぎて、疲れや痛みにつながります。腹横筋は、体を包むコルセットのような役割をしています。
息を吐きながら、お腹を軽くへこませるドローイン(お腹をやさしく引き込む呼吸)を行うだけでも、この筋肉は働きやすくなります。
すると、腰の反りすぎや力みが和らぎ、本来使われるべきお尻や太ももの筋肉も動きやすくなり、腰への負担が分散されます。
筋性腰痛(きんせいようつう・筋肉や筋膜が原因で起こる腰痛)を良くしていくためには、今ある痛みを一時的に抑えるだけでは不十分です。
筋肉の動きをなめらかに整え、体の支え方を思い出させ、姿勢や動きのくせを少しずつ見直していくことが大切です。
薬や湿布だけに頼らず、無理のない体操やリハビリ、やさしいストレッチ、日常生活での体の使い方を組み合わせていくことで、再発しにくい腰をつくることができます。
こんな悩みはありませんか?
✅朝、ベッドから起き上がる瞬間だけ腰が固まって、しばらく動くと少し楽になる。
✅痛い動きをしていないのに、なぜか腰だけが先に疲れてしまう。
✅腰を気にしているつもりはないのに、気づくと腰に力が入り続けている。
✅整形外科で異常なし・加齢ですね・筋肉のこりでしょうと言われるが、痛みが改善せず、再びぶり返してしまう。
✅寝れば回復していた腰の疲れが、最近は翌日まで残るようになった。
✅少し作業しただけで、腰を休ませたくなり、途中で何度も中断する。
これらは、腰を支える筋肉や筋膜が休めなくなり、体の中で腰だけが使われ過ぎている状態でよく見られます。骨や関節のトラブルでは起こりにくく、筋肉と筋膜の働きの偏りが続いたときに特有に現れやすい状態です。

原因
筋・筋膜性腰痛の原因は一つではなく、複数の要因が重なって出てくる。そして慢性化していくと考えられ、主な要因として次のようなものがあります。
- 筋肉を使いながらブレーキをかける動き(遠心性収縮といい、筋肉が伸ばされながら力を出す動き)が繰り返されると、筋肉と筋膜の境目に目に見えない細かな傷が起こりやすくなります。この小さな傷が積み重なることで、筋膜の滑りが悪くなります。
- お腹やお尻、太ももが本来分担するはずの支えがうまく働かないと、腰の筋肉だけが代わりにがんばり続けます。これが続くと、腰の筋肉の疲れが抜けにくくなります。
- デスクワーク・車の運転・スマホ操作など同じ姿勢が続く生活では、筋膜の中の水分循環が低下し、動かさない部分ほど硬くなりやすくなります。硬くなった筋膜は伸び縮みしにくく、動作のたびに引っ張られて痛みにつながります。

- 体を支える役割をもつ深い筋肉【腹横筋(ふくおうきん)や多裂筋(たれつきん)など】がうまく働かなくなると、代わりに表面の筋肉が頑張りすぎます。その結果、腰の筋肉に疲労が集中し、筋膜への負担が増えます。
- 筋膜に炎症が起こると、組織の中の酸素量が減り、回復しにくい状態になります。すると炎症が長引き、硬さと痛みがさらに強まる悪循環に入りやすくなります。
- 痛みが続くことで体をかばう動きが増えると、動かさない範囲が広がり、筋肉がやせたり萎縮(いしゅく・使わないことで細く弱くなること)して筋膜がさらに硬くなったりします。これが慢性化の大きな要因です。
特徴
- 治療を受けた直後は楽になるが、数日から数週間で同じ状態に戻ってしまう。
- レントゲンやMRIで明確な骨・椎間板・神経の明らかな異常が見られないことが多いため、原因がはっきりしなく「異常なし」と言われる割に痛みが続くため、患者自身が不安を感じる。

- 腰やお尻の筋肉を押すと、しこりのような硬さがあり、そこを押すと強い痛みや、少し離れた場所に響く感じが出ることがあります。
- 前にかがむ途中や体を反らす動きで痛みが出たり、動き出しだけつらくて、しばらくすると動けるようになることがあります。
- 体をひねったり、片側に体重をかけた姿勢を続けると、腰の一部だけが張り、左右差を強く感じやすくなります。
- 深い筋肉と表面の筋肉のバランスが崩れた状態が続くと、腰の関節や椎間板(背骨のクッション)にも余計な負担がかかり、ほかの腰痛と重なって起こりやすくなります。
一般的な改善策
- 病院では、レントゲンやMRIで大きな異常がないことを確認したうえで、消炎鎮痛薬(しょうえんちんつうやく・えんしょうを抑える薬)や湿布によって、痛みを一時的に和らげる対応が行われることが多い。
- リハビリでは、電気治療や温熱療法で腰まわりの血の巡りを良くし、張りついた筋肉をゆるめることを目的とした施術が行われる。
- 状態に応じて、軽いストレッチや体操を指導されることがあるが、強く伸ばしすぎると逆に腰の張りが増すこともある。

- 温めることで楽になる場合は、入浴や温熱シートを使い、腰の筋肉がゆるむ時間をつくることが勧められる。
- 日常生活では、長時間同じ姿勢を続けないことや、腰だけに力が入り続けないよう、こまめに体勢を変えるよう指導されることが多い。
- 家庭では、痛みを避けるために動かさないようにしがちだが、安静が長く続くと筋肉がさらにこわばり、回復が遅れることがある。
これらは、筋・筋膜性腰痛に対して広く行われている一般的な対応ですが、その場のつらさを和らげることが中心で、腰の使われ方そのものを変えるところまでは踏み込まないことが多いのが実情です。
さとう流施術所の、なぜこのようなアプローチが効くのか
筋・筋膜性腰痛は、腰の筋肉そのものが壊れて起こる痛みではありません。体を動かすたびに、本来は分散されるはずの負担が腰に集まり続け、筋肉と筋膜が休めなくなっている状態から生じます。
こうした状態では、痛い場所だけを揉んだり伸ばしたりしても、負担の集中そのものが変わらないため、症状がぶり返しやすくなります。
このタイプの腰痛で重要になるのは、腰に負担が集まってしまう体の反応を変えることです。筋・筋膜性腰痛では、痛みのある腰そのものよりも、腰と連動して働く筋肉が反射的に過剰反応を起こしていることが多く見られます。
そこで、筋反射テクニックを用い、腰の痛みと関係して緊張している関連筋(かんれんきん)へ働きかけます。
痛む場所を直接刺激するのではなく、体の反射的な反応を調整することで、腰だけに力が集まる状態が解け、体全体で支える感覚が戻りやすくなります。

また、筋・筋膜性腰痛では、筋肉を包む筋膜の動きが鈍くなり、力の伝わり方が偏っているケースが多くあります。
筋・筋膜グライディング療法では、筋膜と筋肉の間に生じている細かな引っかかりを整え、動作の中で腰に集中していた負担を分散させていきます。
これにより、腰の筋肉が常に働き続ける状態から抜け出しやすくなり、動いたあとの張りや重さが溜まりにくくなっていきます。
さらに、長く続いた筋・筋膜性腰痛では、深い部分の筋肉や神経まわりの緊張が抜けにくくなっていることがあります。
このような状態には、立体動態波療法やハイボルテージ療法を補助的に用います。
電気刺激を立体的かつ深部まで届けることで、手技だけでは届きにくい部分の緊張を緩め、筋肉や筋膜が本来の動きを取り戻しやすい環境を整えます。
さとう流施術所では、いつ・どの動作で・どの筋肉が代わりに働き過ぎているのかを確認し、腰に負担が集まる原因を徹底的に探ります。長く続く筋・筋膜性腰痛に対しても高い改善効果が期待できます。
(※効果には個人差があります)
セルフケア・再発予防
- 多くの人は片足で立つと、骨盤が左右どちらかに傾き、体幹が横に倒れやすくなります。それでは、腰や太ももの外側の筋肉ばかりが働き、体幹が使われにくい状態になります。骨盤を立てて片脚立ちでバランスを取ることで、体幹のコルセット筋(腹横筋・ふくおうきん、多裂筋・たれつきん)を自然に働かせる動きをさせることで背中の筋肉が過剰に張りにくくなり、腰の負担を大きく減らせます。

- 腸腰筋は、股関節から腰の深い部分につながる筋肉で、ここが硬くなると腰の筋膜が常に引っ張られた状態になりやすくなります。この筋肉を伸ばすため片膝立ちになり、後ろに引いた脚の股関節の前側が伸びる位置まで、重心をゆっくり前に移します。腰を反らすのではなく、体全体が前にスライドする感覚で行うのがポイントです。20〜30秒を目安に、左右行います。

- 腰回しは大きく回すと関節や靭帯に負担がかかりやすいため、小さく円を描くように行うのが筋・筋膜性腰痛向きです。目的は腰を柔らかくすることではなく、腰が同じ姿勢のまま固まってしまう時間を減らすことにあります。足を肩幅に開いて立ち、腰を中心に小さな円を描くように動かします。

- 柔らかいソファや深く沈む椅子に座る習慣は、楽に感じても腰の筋膜が常に引き伸ばされた状態になります。長く座るほど腰が休めなくなるため、くつろぐ場所は沈み込みの少ない椅子や床に近い姿勢へ切り替えます。
- 朝起きるときや長く座った後は、いきなり立ち上がらず、腰を小さく揺らしたり、骨盤を前後に軽く動かしてから動き出すことで、筋膜の引っかかりを減らせます。
- 片足に体重をかけていないか・足を組む時間が長くないか・座った時に骨盤が後ろに倒れていないかなど、日ごろから再発予防として姿勢や動作の習慣化した癖に気づく。
Q&A
- 整形外科で「異常なし」と言われたのですが、腰痛が続きます。これは筋・筋膜性腰痛でしょうか?
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その可能性は高いです。実際、筋・筋膜性腰痛ではレントゲンやMRIで明確な神経圧迫や骨・椎間板変性が見られないケースも少なくありません。
- どれくらいで改善しますか?
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症状の経過・生活背景・筋膜・筋機能の状態によって異なりますが、早期(数週間)で動きやすさ・張りの軽減を感じる方が多く、再発予防まで含めると3カ月以上かかる場合もあります。慢性化している場合はやや時間を要します。
- 腰を動かすと痛いのですが、安静にしたほうがいいですか?
-
強い痛みが出ている急性期を除き、動かさないままでいると筋膜の滑りがさらに悪くなり、回復が遅れることがあります。痛みの出ない範囲で体を動かし、動きの中で固まりをほどいていくことが大切です。
- 姿勢が悪いと腰痛になりますか?
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はい。長時間の前屈姿勢・座り姿勢・中腰作業などは体幹の深部筋の働きを低下させ、代償的に脊柱起立筋などに負荷がかかり、筋膜・筋付着部ストレスが増えます。日頃の姿勢・作業動作を見直すことが改善・予防につながります。
- 年齢のせいと言われましたが、本当に仕方ないのでしょうか?
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年齢による変化はありますが、それだけで腰痛が続くわけではありません。筋膜の動きや体幹の使い方を整えることで、年齢に関係なく動きやすさが改善するケースは多くあります。

筋膜と体幹を整えて、再発しない腰へ
筋・筋膜性腰痛は、痛みが強くて動けないというより、動けてしまうのに張りや重さが抜けず、気づくとまた同じところがつらくなる腰痛です。
レントゲンやMRIで大きな異常が見つからないことも多く、我慢しながら同じ毎日を続けてしまいがちです。
さとう流施術所では、いつ痛むか、どんな場面で張るか、どの動きの後に重くなるかを確認し、腰に負担が集まる流れを徹底的に原因追究します。
たとえば、長い車移動の後だけつらい、台所仕事のあとに張る、午後になるほど重いなど、生活の中の偏りがそのまま筋膜の負担の偏りになっていることが少なくありません。
家に帰ってから同じ形で固まらないよう、あなたの生活に合わせた現実的な整え方も一緒に作ります。
ソファに長く座る習慣があるなら座る環境の工夫を、前かがみ作業が多いなら作業の手順を、立ち上がりで反動が出るなら立つ前の準備動作を、できるだけ面倒にならない形に落とし込みます。
もし、ストレッチを頑張っても戻る、湿布や痛み止めだけでは繰り返す、原因が分からないまま不安が残る、そんな状態が続いているなら一度ご相談ください。腰の張りが抜けない理由を生活の中から整理し、動作が軽くなる感覚を積み重ねていきましょう。


