座ると腰が痛いのはなぜ?原因は「お尻の骨の使い方」にあるかも

デスクワーク中や長時間の運転の後、腰やお尻にジワジワと痛みが出てくる。そんなお悩みを抱えている方は、宇都宮市内でも本当に多くいらっしゃいます。仕事、勉強、ソファでのテレビ鑑賞、現代人はとにかく座っている時間が長いですよね。シドニー大学などの国際調査では、日本人の平日の座位時間は一日平均約7時間と、世界でも最長レベルであると報告されています。座っているだけなのに、なぜ腰が痛くなってしまうのか。その答えは、意外にも「座り方」という日常の癖、もっと具体的に言えば「お尻の骨への体重の乗せ方」にあることが少なくありません。今回のコラムでは、長時間の座位姿勢による腰痛やお尻の痛みを予防するために知っておきたい「お尻の骨に体重を乗せる座り方」についてお伝えしていきます。

なぜ、座ると腰やお尻が痛くなるのか

ところが、スウェーデンの整形外科医ナッケムソン博士の古典的な研究によると、立っているときと比べて、普通に座ったときの腰の椎間板にかかる圧力は約1.4倍、前かがみで座ると約1.8倍以上にまで跳ね上がるとされています。座るという行為自体が、実は腰にとってなかなか過酷な状況だったりするんですね。その上、姿勢が崩れていたら、なおさら腰やお尻に痛みが出やすくなるのは当然のことなのかもしれません。

カギを握る「お尻の骨」とは

座り方を考えるうえで、絶対に知っておいていただきたい骨があります。それが「坐骨(ざこつ)」、つまりお尻の骨です。坐骨は骨盤の一番下にある骨で、ちょうど座ったときに椅子の座面に当たる部分の骨のことです。ご自身の手のひらをお尻の下に差し込んで、少しモゾモゾと動いてみると、硬いグリグリとした骨が当たるのを感じられるはずです。これが坐骨ですね。人間の体というのは、脱力してふにゃっと座ると、体重が坐骨の真上にはかからず、坐骨の「後ろ側」にかかってしまう性質を持っています。これがクセ者なんです。

体重が坐骨の後ろにかかると、そこをきっかけに連鎖的に姿勢が崩れていきます。まず、骨盤が後ろに倒れます。すると、その上に乗っかっている背骨は、つられて丸くなっていきます。背骨が丸くなると、頭が前に突き出てきます。そうすると今度は、首や肩にも負担がかかるという具合で、全身のバランスが崩れていくわけです。この状態で長時間座っていると、背中側の筋肉はずっと引き伸ばされた状態になり、まるでゴムが伸びきったような物理的ストレスを受け続けます。さらに、お尻の奥を走っている坐骨神経という太い神経にも、圧迫や引っ張られるストレスが加わってきます。こうして、腰やお尻の重だるさ、痛み、場合によってはシビレといった症状が出てくることがあるのです。

「背筋を伸ばしなさい」が続かない理由

子供の頃、「背筋を伸ばしなさい!」と親や先生に言われた経験、みなさんも一度はあるのではないでしょうか。ところが、意識して背筋をピンと伸ばしても、ものの10分もすれば疲れてきて、結局もとの猫背に戻ってしまう。そんな経験、ありませんか? 背筋を無理やり伸ばすというのは、背中の筋肉を常に緊張させ続けるということ。筋肉は収縮すればするほど疲労していきます。マラソンを延々と走り続けるようなものですから、続かないのは当たり前なんですね。

大切なのは、筋力で姿勢を保つのではなく、「骨格に乗せる」という発想に切り替えることです。骨に乗せることができれば、筋肉は最小限の働きで済みますから、疲れにくく、長時間の座位でも姿勢を保ちやすくなります。この「骨に乗せる」感覚のキーポイントが、お尻の骨なんです。

デスクワークでも実践できる「お尻の骨に体重を乗せる座り方」

それでは、実際に体感していただきましょう。ぜひ椅子に座って試しながら読んでみてください。まず、椅子に浅く腰かけ、手のひらをお尻と座面の間に差し込みます。少しお尻を揺すって、硬いグリグリした骨が手のひらに当たるのを確認してください。それがお尻の骨です。位置がわかったら手を抜きます。次に、あえて全身の力をダラーっと抜いて座ってみてください。骨盤が後ろに倒れて、背中が丸まっているのを感じるはずです。この状態では、体重はお尻の骨の後ろに落ちていて、骨の真上には乗っていません。さぁ、ここからが大事なポイントです。丸まった状態から、「みぞおち」、つまり肋骨の下の真ん中あたりを、ほんの2センチほどだけ前にスッと押し出してみてください。ぐっと力を入れて胸を張る必要はありません。

どうでしょう。さっきまでお尻の骨の後ろにあった体重が、スーッと骨の真上に乗った感じがしませんか? この「ピタッとお尻の骨に乗った感覚」、これが正解です。背筋を伸ばそう、胸を張ろうという意識は一切いりません。みぞおちをほんの少し前に出すだけで、骨盤が自然と起き上がり、体重が骨の真上に落ちる、たったこれだけのことなんです。

たとえるなら「積み木」

「お尻の骨の上に体が乗っている状態って、積み木みたいなものなんですよ」というたとえ話があります。土台のブロックの真上に、次のブロックをきっちり乗せていけば、高く積み上げても倒れません。ところが、土台の端っこや後ろにズレて乗せていくと、上に行くほどグラグラして、ちょっと触っただけで崩れてしまいますよね。

人間の体も同じで、お尻の骨の真上に骨盤、背骨、頭とまっすぐに積み上がっていれば、筋肉の力を使わなくても姿勢は安定します。逆に、お尻の骨の後ろに体重が乗っていると、まさに端っこにズレた積み木と同じで、放っておけば自然と崩れてしまう。それを防ぐために背中や腰の筋肉が必死に頑張ることになり、結果として疲労や痛みにつながっていくというわけです。以前、80代の女性の方がこの話を聞いて、「あら、じゃあ私の背中はズレた積み木だったのねぇ」と笑っていらっしゃいました。毎日コツコツこの座り方を続けられて、以前より楽になったとおっしゃっていました(※効果には個人差があります)。

背もたれや運転席ではどうする?

「仕事中とか車の運転中って、背もたれに寄りかかってるよね? そのときはどうすればいいの?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。結論から申し上げると、背もたれに寄りかかっていても、この座り方は実践できます。ポイントは同じで、背もたれに背中をつけたまま、みぞおちを1〜2センチだけ前にほんの少し押し出すこと。こうすることで、座面に対して斜めの方向からお尻の骨に体重を乗せる状態を作れます。

この姿勢だと背骨の自然なカーブが保たれ、腰やお尻への負担が減りやすくなります。以前、タクシーの運転手をされている方がこの方法を聞いて、「これ、ハンドルを握ったまま自然にできますね」と驚いていらっしゃいました(※効果には個人差があります)。長距離ドライブをされる方にもおすすめの姿勢です。

意識し続けなくていい、「気づいたらリセット」する

「この座り方、仕事中ずっと意識しておくのは無理じゃないですか?」というご質問もよくいただきます。はい、おっしゃる通りです。何かに集中していたら姿勢のことなんて頭から飛んでしまうのは当然です。それでいいんです。

おすすめしているのは、「常に意識しましょう」ではなく、「気づいたときにリセットしましょう」ということ。ふと「あ、なんか腰が重いな」と気づいたとき、みぞおちをスッと前に出してみる。それだけで、「お尻の骨に乗ったな」という感覚が戻ってきます。これを一日のうちに何度か繰り返していくと、だんだんと脳が「これが正しい姿勢だ」と学習していき、最終的には意識しなくても自然とお尻の骨に乗って座れるようになりやすくなります。

合わせて取り入れたい三つの習慣

先日、40代のデスクワーク中心の会社員男性の方が、こんなお話をされていました。「座っているときだけ腰が重だるくなる。立っているときや歩いているときは平気なのに、なぜ座るとダメなんでしょう?」と。これ、実はとてもよくあるご相談なんです。座っている姿勢は、一見すると体に優しい楽な姿勢に思えますよね。

この座り方と合わせて取り入れていただくと、さらに効果が出やすくなる習慣を三つご紹介します。一つ目は「30分に一度は立ち上がる」ということ。どんなに良い姿勢でも、同じ姿勢を保ち続けるのは体にとってストレスです。少し歩いたり、軽く背伸びをしたりするだけで、筋肉や関節のこわばりを防ぎやすくなります。二つ目は椅子選びです。柔らかすぎるソファ型の椅子は、お尻の骨がめり込んで正しい座り方がしにくくなります。ある程度硬さのある椅子のほうが、骨に乗る感覚がつかみやすいのです。三つ目は足の位置です。足の裏がしっかり床につくようにしてください。足がブラブラしていたり、足を組んでいたりすると、骨盤が傾いてせっかくの座り方が台無しになってしまいます。

おわりに

長時間の座位による腰やお尻の痛みを予防するためには、「お尻の骨(坐骨)に体重を乗せる」という感覚を身につけることがとても大切です。自分のお尻の骨の位置を手で触って確認し、みぞおちを1〜2センチだけ前に出して、骨の真上に体重を乗せる。背もたれに寄りかかるときも、運転中も、同じ要領で応用できます。痛みの多くは、毎日の生活習慣の積み重ねから作られていきます。座り方の癖ひとつとっても、何年、何十年と続けていれば、それは体に大きな影響を与えていくものです。逆に言えば、良い習慣を少しずつ身につけていけば、体は応えてくれるはずです。さて、このコラムを読み終えた今、あなたのお尻の下ではどちらに体重が乗っているでしょうか。坐骨の真上か、それとも後ろ側にズレているか。まずはそこに気づくことから、体との付き合い方が少しずつ変わっていくのかもしれません。

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